【Case 4】「職人の目利き」をデジタル化する。現場業務のアップデート
(Milk. × マグナ・ワイヤレス)
インタビュイー
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株式会社マグナ・ワイヤレス
プロジェクト推進室 シニアコンサルタント高宮 正治 氏
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Milk.株式会社
代表取締役CEO中矢 大輝 氏
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株式会社マグナ・ワイヤレス
プロジェクト推進室 コンサルタント斎藤 脩平
※所属・役職は取材当時のものとします。
多くの企業が抱える課題の一つに、ベテラン社員の「経験と勘」に依存した業務の継承がある。スタートアップの技術は、こうした属人的なスキルをデジタル化し、標準化するためのツールとなり得る。大手すしチェーンと連携したMilk.株式会社の事例は、まさにその好例だろう。

(写真左から)株式会社マグナ・ワイヤレス プロジェクト推進室 シニアコンサルタント 高宮正治氏、Milk.株式会社 代表取締役CEO 中矢大輝氏、株式会社マグナ・ワイヤレス プロジェクト推進室 コンサルタント 斎藤脩平氏
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高宮氏:私たちが支援したMilk.は、ハイパースペクトルカメラという技術を持っています。人の目には見えない光の情報を捉えて、対象物の状態を可視化できる。その技術をもとに開発したデバイスを大手すしチェーンの現場に持ち込んだ目的は、マグロなどの食材の鮮度を可視化することでした。

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中矢氏:具体的には、職人が目で見て判断していた「ネタの染色具合」や「ちょっとしたムラ」といった微妙な違いを、データとして検出できる可能性が見えてきました。 これまでは、ベテランの職人が長年の経験で「これはいいネタ」「これは少し落ちる」と判断していたものを、カメラで撮影するだけで数値化できるんです。
さらに実証実験では、実は油分の量や血合いの量も測っていて、そちらも鮮度と同じように測定できることがわかりました。大手すしチェーンの担当者の方からは「(これらの数値データも)使えそうだね」という反応をいただきました。

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斎藤氏:一方で、業務で使うとなると、耐水性や洗えるかどうかといった衛生面など、実務的な課題が出てくることもわかりました。工場ではボックス型のセンサーにしてほしいといった要望や、店舗ではハンディタイプのニーズがあるのではという話もありました。そこは今も継続して検証が進んでいます。
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中矢氏:この「見えないものを可視化する」という技術は、食品だけに留まりません。プロジェクト終了後、この成果を見たJA(農業協同組合)や農家の方々から声をかけていただき、農作物の検査へと一気に展開が進みました。 さらには、エネルギー鉱石の探査や、災害リスクの検知といった分野にも応用できる可能性があります。
4つの事例を通じて見えてきたのは、本プロジェクトにおける連携事業者が、単なる「場所貸し」や「資金提供者」ではないという事実だ。 彼らはスタートアップという「新しい風」を触媒にして、自社のビジネスを加速させている。
現在進行中の後継事業「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」では、さらなる協業のチャンスが生まれている。 必要なのは「支援」ではなく、自社の課題解決のためにスタートアップと「協働」する姿勢だ。その健全なビジネス視点こそが、結果として双方に持続可能な利益をもたらすパートナーシップとなるだろう。
■「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」とは
東京都は、5G技術・サービス等を活用した持続可能な新しい社会の実現等を理念に掲げ、官民を挙げて社会課題の解決をする取り組みとして、令和2年度から令和6年度にかけて本事業を通じ、5Gを活用したスタートアップ企業等の開発・事業化の促進を支援してきました。
本事業では、東京都と協働して支援を行う民間事業者を開発プロモーターとして募集・選定し、多角的な支援を行いました。開発プロモーターは、他の開発プロモーターや通信事業者等と連携・協働を図りながら、最大3年間にわたりスタートアップ企業の開発・事業化を資金的・技術的支援、マッチング支援など多面的に伴走支援を行いました。

■「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」とは
東京都では、都内スタートアップ企業が、都心部から郊外・山間部、離島を持つ東京というフィールドを活かしながら、世界で通用する競争力を磨き、5Gをはじめとした次世代通信技術を活用した新たなビジネスやイノベーションを創出し、都民のQOL(Quality of life)向上に寄与する有益なサービスを創出するとともに、各スタートアップ企業の企業価値向上を目指しています。
本事業は、前身事業であるTokyo 5G boosters Project同様、東京都と協働して支援を行う事業者を開発プロモーターとして募集・選定し、スタートアップ企業に対し多角的な支援を行います。開発プロモーターは、3カ年度にわたり支援先スタートアップ企業等の開発・事業化を促進するため、連携事業者(通信事業者や実証フィールド提供者、研究機関、VC・金融機関等)と連携しながら、資金的、技術的な支援やマッチング支援等を行います。支援先スタートアップ企業は、開発プロモーター等の支援を受けながら、次世代通信技術等を活用した製品・サービスの開発及び事業上市を目指します。
▼詳細はこちらをご参照ください(「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」ウェブサイト)
https://next-5g-boosters.metro.tokyo.lg.jp/