2026.01.29
行政支援が加速させる「社会実装」。
参加スタートアップが語る、Tokyo 5G Boosters Projectのリアル
スタートアップが社会実装の壁を越え、技術・製品・サービスを世に届けるために──。東京都が実施した「Tokyo 5G Boosters Project」は、単なる資金支援の枠を超え、スタートアップと開発プロモーターが膝を突き合わせて事業を磨き上げる「共創の場」となった。
当初の想定とは異なる分野への大胆な事業転換(ピボット)、自社で用意した仮想環境では見えなかった技術課題の発見、そして「東京都」という看板が導いた連携の扉。本事業に参加した4組の証言から、協定事業という行政支援と「5G」というテーマをテコにして自社の可能性を最大化させた、成長の軌跡を追う。
【Case 1】計画通りの「成功」だけが正解じゃない。絶望からの「ピボット」を支えた伴走支援
(Milk. × マグナ・ワイヤレス)
インタビュイー
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株式会社マグナ・ワイヤレス
プロジェクト推進室 シニアコンサルタント高宮 正治 氏
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株式会社マグナ・ワイヤレス
プロジェクト推進室 コンサルタント斎藤 脩平 氏
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Milk.株式会社
代表取締役CEO中矢 大輝 氏
※所属・役職は取材当時のものとします。
スタートアップにとって、市場の反応や技術的な壁に直面した際、事業をピボットすることは生存戦略そのものだ。しかし、あらかじめ仕様や成果物が決まっている、多くの行政などの公募事業では、その柔軟な軌道修正が難しく、当初の計画に縛られてしまうことも少なくない。
本事業では、そうした「計画変更」はどのように扱われたのか。宇宙技術を応用したハイパースペクトルカメラで医療分野でのサービス展開を目指していたMilk.と、その支援を担当したマグナ・ワイヤレスの事例から、ピボットのリアルを紐解く。

(写真左から)株式会社マグナ・ワイヤレス プロジェクト推進室 シニアコンサルタント 高宮正治氏、同社同室 コンサルタント 斎藤脩平氏、Milk.株式会社 代表取締役CEO 中矢大輝氏
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中矢氏:プロジェクト参加当初は、私たちの持つハイパースペクトルカメラ技術を使って、がん診断を行うシステムの開発を目指していました。しかし、3年という支援期間では医療機器としての許認可の取得や実用化は間に合わないだろうと判断し、より実現可能性が高いと考えてスポーツ選手の唾液からストレスホルモン(コルチゾール)を計測するシステムの開発に取り組むことにしました。
しかし検証を進めていくと、試薬が高価すぎてコストが見合わないといった問題が見つかり、「この方向性も厳しい」となったんです。

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高宮氏:その話をされた打ち合わせの空気は、本当に重いものでした。残り期間が1年を切ろうかというタイミングでの方向転換の話でしたから、支援する側の私たちとしても、正直「青天の霹靂」という感覚でした。そこで考えたのは、「今ある技術、今までの検証結果の中で、事業化に近いものは何か?」を議論することです。
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中矢氏:それまでに手がけていた別の基礎的な検証でマグロの鮮度測定に関するデータを持っていたのですが、「それなら食品検査の分野にいけるのではないか」とマグナ・ワイヤレスさんから提案いただきました。
そこから食品向けのハンディデバイス「イロドリ(IRODORI)」の開発に舵を切り、実質4カ月ほどでデバイスを組み上げました。マグナ・ワイヤレスさんには、大手すしチェーンとの実証実験の場を用意していただき、現場での検証に進むことができました。

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中矢氏:実証実験では、マグロの鮮度を数値化することでフードロスを削減できるかを検証しました。従来は目視で「怪しい」と判断されたマグロは廃棄されていましたが、イロドリを使えば鮮度を数値で把握でき、「あと何日もつか」の予測も可能になります。
また、マグナ・ワイヤレスさんに整備していただいた5G通信環境下で、デバイスからデータをアップロードし、解析結果を返すという一連の流れも検証しました。現場で複数台が同時に稼働する将来を見据えた実験です。
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斎藤氏:技術的な可能性だけでなく、実際の業務環境で何が求められるのか。ビジネスとして実用化するために必要なフィードバックを得られたことが、この実証実験の大きな成果でした。

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中矢氏:ピボットを経た結果、このデバイスは現在、マグロだけでなく、ミカンやイチゴ、ブドウなどの農作物、さらにはお肉やお茶の品質管理にも使えることがわかってきました。最近ではアパレルメーカーや、高級ウイスキーの真贋判定など、当初想定していなかった分野からも引き合いをいただき、事業の可能性の広がりを感じています。
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未来の暮らしがすぐそこに。「Tokyo 5G Boosters Project」が届ける、新しい東京の姿

病院に行かなくても目の診察が受けられる。ドローンが空を飛んで荷物を届けてくれる。離れた相手と立体映像で会話できる──こうした技術が、いま東京で実用化に向けて動き出している。
コロナ禍を契機にデジタル化の重要性が急速に高まるなか、東京都は次世代通信規格「5G」の技術・サービスを活用した非接触型社会の実現を理念に掲げ、令和2年度から6年度にかけて「Tokyo 5G Boosters Project」を実施してきた。民間の事業者と協働しながら、スタートアップ企業の開発・事業化を資金・技術・ネットワークなどの面から支援する取り組みだ。都心から山間部、離島まで多様な環境を持つ東京を実証の場に、医療、物流、防災、エンターテインメントなど幅広い分野で成果が生まれている。
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2026.03.10
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この事業では、東京都がスタートアップを直接支援するのではなく、都と協働してスタートアップの支援を行う民間事業者を「開発プロモーター」として募集・選定。彼らを通じてスタートアップの開発・事業化を資金面・技術面など多面的に支援するという事業スキーム、またその開発プロモーターの取り組みに対して成果報酬型の協定金を支払うという新たな仕組みが採用された。
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2026.02.12
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2026.01.20
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